日本は世界有数の大国!知られざる「緑の海藻」のポテンシャル 

編集者・ライター林田 順子

海藻は最強の食材だと思っている。 

和・洋・中を問わず、いろいろな料理に手軽に使えて、保存もしやすく、しかも食物繊維やミネラルが豊富でヘルシー。 

わかめやアカモクを湯にくぐらせた瞬間。茶褐色だった海藻が、パッと鮮やかな緑に変わる。色が変化するさまを眺めながら、漂ってくる磯の香りを嗅いでいると、むくむくと食欲が湧き上がってくる。 

海苔を絡めた簡単パスタ、ラーメンの具材が物足りないときは、海苔や乾燥わかめをトッピング。常備菜にわかめの酢の物やひじき煮があれば最高。深夜でも罪悪感なく、小腹を満たすことができる。酔って帰ったときには、とろろ昆布にお湯を注ぎ、醤油をチョロリと加えれば、たちまちスープの出来上がり。簡単なのに滋味深い味わいに、ホッと胃も気持ちも落ち着く。 

こんなとき、私は思う。「あぁ、海藻があってよかった」と。 

旅先の土産店でも、海藻をチェックする。地方や離島など、その土地で採れた海藻はワイルドだ。風味は濃く、食感もしっかりとしていて、普段買っている海藻が、都会の軟弱者のように思えてしまう。だから、旅先では自分のためのお土産に海藻を買うようにしている。しかも乾物なら軽いという、旅土産としての優秀さまで備えている。 

しかも土地が変わると、名前まで変わる。ワカメやヒジキの仲間の「アカモク」は、長いものでは10m近くまで成長する。秋田では「ギバサ」、新潟・佐渡では「ナガモ」などと呼ばれている。ナガモは、その名の通り長く伸びる姿から名付けられたのだそうだ。ひとつの海藻に土地ごとの名前があることも、お土産向きだ。 

日本は世界有数の海藻大国だ。日本近海に自生する海藻は1500種類以上。そのうち食用とされているのは約50種類とも100種類以上とも言われている。コンブ、ワカメ、ノリ、ヒジキ……と記憶を巡らせても、50種類すら食べた覚えがない。つまり、まだまだ知らない海藻が日本各地にあるということだ。 

ところが、日本にどれだけの海藻があるのか、その全貌はいまだつかみきれていないらしい。土地によって名前も変われば、身近すぎて注目されていなかったものもあり、今でも分類の見直しが続いていたり、十分に調査されていない海藻もあるという。さらに近年は、温暖化やウニ、魚による食害などによって藻場が衰退し、かつてそこにどんな海藻が生えていたのかを知ること自体が難しくなっている場所もある。 

なくなって初めて気づく海藻の価値。 

「あぁもったいない」。 

そう思っているのは、私だけではない。最近では藻場を復活させるさまざまな試みが日本各地で進んでいる。ドローンや衛星画像で藻場を調べたり、海藻を陸上で育てたり。鹿児島県の徳之島ではモデルの水原希子さんをモチーフにした巨大な彫刻を海底に沈め、藻場として機能させるという斬新な試みも行われている。

ⓒchris_tokunoshima

料理の世界も動いている。2026年に京都で開かれた「海藻サミット」では、『レフェルヴェソンス』の生江史伸さんがスジアオノリを練り込んだ海藻バターと、ワカメや海藻のピクルスのバゲットを、『一子相伝なかむら』の中村元紀さんは、アオサのチップを添えたスジアオノリ醤油を使ったアイスクリームを披露したという。海藻がバターになり、ピクルスになり、ついにはアイスクリームにまでなる。まだまだ食べ方はありそうだ。 

さらにこの豊かな日本の海藻文化は、今ウェルネスな食文化として、海外からも注目を集めている。 

世界も認める、日本の豊かな海藻文化。それなのに、国民健康・栄養調査によると日本人が食べる「藻類」は1人1日10g前後。1500種類もの海藻に囲まれて暮らしているとは思えない。 

簡単にさまざまな海藻が手に入る幸福。それを享受し続けるためにも、今日も私は嬉々として海藻料理を食べている。 

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編集者・ライター林田 順子

神奈川県横浜市出身。ファッション誌や生活情報誌、女性誌などを経て、独立。ウェルネス、スポーツ、ブライダル、ジュエリー、ビューティ、旅、グルメ、インタビューなどさまざまなジャンルを担当。

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