紫の粒から広がる、日本の景色。知れば知るほど楽しい「日本ワイン」の世界

秋の気配とともに、たわわに実るぶどうの季節がやってくる。

夏はすっきりとした白ワインばかり飲んでいたけれど、少しずつ気温が下がってくると赤ワインが飲みたくなってくる。暑さが残るうちは軽めに、寒くなってきたら重めに。
私にとってワインは季節の移ろいを実感するものでもあるのだ。その代表が「日本ワイン」。この季節になると、収穫の様子がSNSにアップされたり、イベントのお誘いが増え、「今年もそんな季節になったんだなぁ」とワクワクしてくる。
そんな私だが、かつては日本“の”ワインが苦手だった。
親戚が旅行へ行くたび、お土産に、と買ってきてくれたご当地ワインは妙に甘かったり、シャバシャバしていたり。「こんなのワインじゃない」と、こっそり処分したことさえある(申し訳ない)。
ところが11年前。その頃知り合った、日本ワインのイベントを主催する友人から「最近の日本のワインはすごく進化しているから、一度イベントに来てほしい!」と熱く誘われた。最初はお付き合い、のつもりだった。
だが着いた途端、会場の熱気に圧倒された。
気取ったワイン会の雰囲気はどこへやら、まるで大人の文化祭。グラスを差し出すと、造り手さんたちが「こんな作り方をしてみたんだ」「これも飲んでみて!」と楽しそうにワインをなみなみと注いでくれる。

そして口に含んで驚いた。
「……えっ、めちゃくちゃおいしい!」
私が持っていた日本“の”ワインのイメージとはまるで別物だった。
以前は輸入果汁などを原料に国内で造ったワインとの違いがわかりにくかったが、2018年から表示ルールが適用。「100%日本国内で収穫されたぶどうを使い、日本国内で造られたもの」だけが、晴れて『日本ワイン』と名乗れることになった。
ぶどうだって実に多彩だ。甲州、マスカット・ベーリーA、山幸。そして今年8月には長野の竜眼も、ブドウとワインの国際機関OIVの品種リストに仲間入りした。日本から登録された品種はこれで4つ。もちろんシャルドネやメルロー、ピノ・ノワールだって、日本の畑ですくすく育っている。
日本ワインの魅力は、“寄り添う力”にあると思う。繊細な果実味やきれいな酸を持つワインは、出汁を効かせた和食はもちろん、素材を生かしたフレンチやイタリアンにも、驚くほどすっと馴染む。もちろん普段の家庭料理にだって合う。毎日の食卓をぐっと豊かにしてくれる身近さこそ、日本ワインの真骨頂だと思っている。
日本ワインにすっかりハマった私は、友人に連れられ各地のワイナリーへ。ヨーロッパのようにきれいに整った畑もあれば、足元まで草が茂るワイルドな畑もある。蔵を歩きながら造り手さんの話を聞いたり、繁忙期には畑仕事を手伝ったり。本でしか知らなかった知識が、手触りのあるものになっていく。一杯のワインから、人へ、畑へ、土地へ。私は日本ワインで、新しいワインの楽しみ方を手に入れたのだ。

どのワインも造り手さんの個性やこだわりが詰まっていて、毎回何を選ぼうかと頭を悩ませる幸福。だからこそ、各地のイベントに足を運び、乾杯し、お気に入りの一本を見つけ、旬の味覚とともに楽しんでいる。知れば知るほど、飲めば飲むほど世界が広がる。だから私は今日も、この幸せな沼に嬉々として浸かっている。
AUTHOR

神奈川県横浜市出身。ファッション誌や生活情報誌、女性誌などを経て、独立。ウェルネス、スポーツ、ブライダル、ジュエリー、ビューティ、旅、グルメ、インタビューなどさまざまなジャンルを担当。

